ハセガワ 1/32 グラマン F6F ヘルキャット 製作記





タミヤさん、1/32新作でヘルキャットをお願いします!1/32ヘルキャットのキットはトランペッターもリリースしていますが、ぱっと見で気に入りません。仕方ないので古いこのキットを作っていきます。


【下準備】

まずは方向性を決めます。コンセプトは、「タミヤのコルセアの横に置いても遜色ない完成度」です!

諸先輩方が素晴らしい考証を基にF6Fの製作記録をアップされていますが、私の場合は素人に毛が生えたぐらいでも実践可能なディティールアップを目指します。

改造する部分の目標を設定します。

1、パネルライン掘り直し&リベット

2、コクピット周りのディティールアップ

3、エンジン回り、脚周りのディティールアップ

この3項目の達成を目標とします。

外形もおかしい所があるようですが、仮組したところ、個人的にはそんなに気になりませんので、現時点ではディティールの改造に留めようと思います。

とりあえず、インストを眺めます。

インストは極めてシンプルで、完成までに9項目しかありません・・。

但し、今回は改造しながらなので、1項目当たりの所要時間が全く読めません・・。

すさまじい量の行間が存在します。

改造に当たって、どれだけ本物っぽくなるかという観点から、写真集などを参考します。

【出典】大日本絵画 エアロディティール17 グラマンF6Fヘルキャット

まずは「エアロディティール」。レストア機のディティール本です。後ろで燃えて落ちていくゼロ戦の絵、要ります?

グラマンF6Fヘルキャット (エアロ・ディテール)

【出典】酣燈社 精密図面を読む


精密図面を読むBest Selection vol.1 第二―航空機の原点 (1) (KANTOSHA MOOK)

次に、「精密図面を読む」をリベットラインの参考書として使います。三面図は描いた人によって少しずつ違うので、「これ」と決めたほうが良さそうです。「世界の傑作機」もありますが、不鮮明な写真が多いので使うかどうかは判りません。

【外板の処理】

それでは製作に入っていきましょう。

まず下準備をしておきましょう。キットの筋掘りは太すぎるので、瞬着で埋めていきます。私が下手なのか、黒い瞬着のように高粘度瞬着だと気泡が残る場合が多いので、サラサラめの瞬着を何層も重ねて埋めていきます。瞬着硬化スプレーがマストアイテムです。写真は主翼のみですが、胴体も同様に埋めていきます。

【出典】大日本絵画 エアロディティール17 グラマンF6Fヘルキャット

エアロディティール中のレストア機の写真です。細かいところを見れば、オリジナルとは異なる部分が多々あるのでしょうが、言い出すと終わらないし、そもそも100%でオリジナルをコピーするのは不可能なので、写真が豊富なレストア機を教科書に作っていきます。

写真を見てお分かりいただけると思いますが、細部の工作がうまくできるのであれば、キットそのままの凸モールドのほうが正解だと思います。パネルのつなぎ目に隙間なんてありませんからね。それに、リベットも凸なので、これまたキットが正解ですね。

ただ、模型として面白くないのと、凸モールドはサンディングで消えてしまうと、リカバリーが大変なので今回は凹モールドを掘っていきます。その前に、三面図とキットを照らし合わせてみましょう。

【出典】酣燈社 精密図面を読む

大方正解のようです。キットの凸モールドをそのまま筋掘りになおします。全てこの方式でいければ楽なんですけどね。まず最初に写真のマーカー部分(直線のライン)を掘っていきます。ハセガワトライツールのエッチング製テンプレートを利用して直線を引きます。機体上下のRがある部分は胴体左右を貼り合わせた後で掘りますので、今は何もしません。

【出典】大日本絵画 エアロディティール17 グラマンF6Fヘルキャット

「エアロディティール」より、右舷前方のアクセスパネルです。スケールを考慮すると見えるか見えないかぐらいの極細線なのですが、模型なので、0.1mmぐらいの幅で掘っていきます。直線はラインチゼル、曲線はニードルで掘ります。

プラバンでテンプレートを作って掘ります。サイズ感は目検で決めます。目指すところが「ぱっと見おかしくない」なので、これでOKです。人の目検って割と正確ですよね。

一通り終わったら600番でサンディングし、墨入れをしてチェックします。やはり、パーフェクトとはいきませんが、あくまでも、塗装の際のアクセントの意味合いが強いので良しとします・・・言い訳ですね。

【コクピット周り】

【出典】酣燈社 精密図面を読む

コクピット後ろの小窓を作ります。ここは割と目立つ部分であり、図面と比較しても明らかに形が違うのがよく分かります。ちょっと大変ですが、作り直します。

窓周りを大きく切り欠きます。

透明プラバンで切り欠いた部分を埋めて、上部を機体のRに合わせてサンディングします。とはいえ、既製品の透明プラ板でこんな厚いのは無いので、今回は転がっていたセロテープのホルダーを使っています。その後、磨き上げます。写真は磨き上げて窓のイメージをマーキングした状態です。

続いてコクピットを作っていきます。

バーリンデンのレジンセットを使用します。


Verlinden 1:32 F6-F5/3 F6F-5/3 Hellcat Cockpit & Gunbay ハセガワ用 #1435

コクピット後方に窓があるので、防弾版を加工していきます。

【出典】大日本絵画 エアロディティール17 グラマンF6Fヘルキャット

実機写真を見ると長細いスリットに透明の板が貼ってあるように見えます。

ピンバイスで穴を開けてそれらを繋げて開孔します。

そしてその他部品も作っていきます。見えそうな所だけ自作します。コクピット防弾版の裏側にはタンク類があるのですが、詳細形状、位置が不明なためオミットします。のぞきこまないと見えませんので。

パイロットシートはタミヤのコルセアから持ってきます。レジンキット付属のシートは形状は同じなのですが、背もたれの高さが低くてなんとなくしっくりこないので、やめておきます。シートはナノアビを使用します。あと、操縦桿もタミヤコルセアからトレードです。

塗装後。フロアーはこんな感じになります。インパネがやや寂しいのですが、エアロディティールを見たら結構修正点があるので、このままで諦めます。

サイドコンソールも寂しいのですが雰囲気は出ているのでこのままいきます。防弾版より後ろはグレーに塗ってあります。白かな??ってぐらい明るい感じがします。「世界の傑作機」の実機写真でもそんな感じがします。

【出典】文林堂 世界の傑作機

胴体を貼り合わせて仮組してみます。

仮組してみると、情報不足感はそんなにないと思います。

パイピングなど、たくさん追加ポイントはあるのですが、機体側壁の角度なども影響してほぼ見えなくなります。そういう意味ではレジンキットはポイントを抑えていると思います。

【外装の工作】

胴体左右を接着し、接着部のサンディングが終わったら残りのスジボリ、リベットを掘っていきます。


スジボリ用ガイドテープ 6mm (30m巻)


GSIクレオス Gツール GT65 Mr.ラインチゼル


Mr.ラインチゼル用替刃 0.2mm GT65B

曲線部は写真の「ハイキューパーツ」のガイドテープを使用します。今回初めて使用したのですが、曲面用のツールとしては、個人的には過去最高の使いやすさです。粘着力も強いですし、そこそこのRにも対応します。何よりもテープの硬度が高く、力さえ入れなければ、金属製テンプレートに匹敵する、まっすぐなラインが引けます。ラインはクレオスのラインチゼル(0.15mm)を使用します。

【出典】大日本絵画 エアロディティール17 グラマンF6Fヘルキャット

胴体部分で気になる点を修正しておきます。写真の垂直尾翼の先端のところが、キットは丸すぎるので、プラバンを加工してとんがった感じを再現します。

【出典】大日本絵画 エアロディティール17 グラマンF6Fヘルキャット

次にキャノピー開閉レールを加工します。実機写真で見ても線が2本という解釈で違和感ありませんね。よってø0.3mmの丸棒を2本並べで終了です。雰囲気重視です、ご了承願います。後端部のワイヤーガイド(?)は同じく0.5mm角のプラ棒を加工します。実機は涙滴型なのですが、小さすぎてサンディングできませんので、「なんとなく」的な形状にするのが精一杯です(汗)。

サフを吹いて確認します。

サンディングのカスが取りきれていないので、写真的には今一ですが、彫りの不足、リベットの深さ等をチェックして問題ないことを確認します。

因みに、復元機によると背中のパネルラインが、機体を上から見てやや左にオフセットされていますので、本機もそのようにしてみました。

【出典】大日本絵画 エアロディティール17 グラマンF6Fヘルキャット

ここで、コクピット後部の小窓の周りだけ先に塗装して置きたいと思います。塗料が機体内部回り込まない様、完全に養生するつもりではおりますが、なんとなく不安なので修正が効くうちに塗っておきます。

粗が目立ちますね・・・。後で直します。(-_-;)

【翼の製作】

順番が前後してしまいますが、塗装に際しマーキングを決めておかないといけませんね。エース、マッキャンベル機のマーキングもキットに付属していますが、グロスシーブルー一色の機体なので、なんかぱっとしません。なので、今回はトライカラーでガッツリ汚すことにしました。箱絵の機体と同じ、ホーネット(CV-12)搭載機の機番41のF6F-3にします。下記、「世界の傑作機」にもはっきりとした写真があります。モノクロですがかなりの情報量です。

【出典】文林堂 世界の傑作機


グラマンF6Fヘルキャット (世界の傑作機№71[アンコール版])

というか、よく考えたら、パネルライン引きをを3型でやってきましたので、自動的にこの機体となります。

次に主翼の加工に入ります。

まず動翼を微修正します。キットは「布張り」を強調したモールドになっていますが、実際はこんなに凸凹していないので、見た目だけ少し直します。。

まずは実機のエルロン。ヒンジ部?のステーもこんなに細いんですね、・・。加工しようか・・。悩みます。実機写真で確認してみましょう。

【出典】大日本絵画 エアロディティール17 グラマンF6Fヘルキャット

続いてエレベーター。ここも遠目にはよく判らないぐらい平坦です。

【出典】大日本絵画 エアロディティール17 グラマンF6Fヘルキャット

【出典】大日本絵画 エアロディティール17 グラマンF6Fヘルキャット

フラップとエルロンの上面です。よく見ると、いや、よく見なくてもステッチが点々です・・。さすがにこれの再現は厳しいかな・・・。

気を取り直して小部品を作っていきます。

フラップ上面の形状を直します。写真を見てもまっ平なので、フラップ収納時に見える部分のみを、土台付きのペーパーで平らにします。向かって左がキットそのままです。右の状態へ削ります。

エルロンの表面です。極細のプラ棒を使用してリブ表現をしていきます。今回使用は0.4øの丸棒です。写真は0.5mm×0.8mmの角棒のパッケージを映してしまってますね、メーカーのご紹介程度ということで、ご了承願います。他にはエバーグリーン製でも大丈夫です。

削ってサフを吹いてみました。まだ少し目立つ気がしますので、今後もう少し削ってみます。ちなみに、キットのスジボリは全て埋めてあります。

水平尾翼も同様に。

こっちはまずまずでしょうか。

次にパネルラインを掘っていきます。三面図を参考に鉛筆で描いていきます。

三面図の縮尺に合わせて線を引いてもつじつまが合わない部分が出てきますので、その辺りは適当にデフォルメさせます。スジボリガイドテープとクレオスのラインチゼル(0.15mm)を使用してパネルラインを引きます。

リベットを打って主翼と胴体を接合します。リベットはニードル系で地道に打ちます。写経とはよく言ったものです。リベット打ちの工程は本当に苦行です(笑)。各パネルのボルト表現は0.4øのドリルで軽くさらっています。

あと、上面の主翼と胴体の接合ラインがキットと実機では違いますので、接着後に接合部のラインを完全に消してから、ラインを引き直します。

上面はこんな感じでひとまず完成とします。塗装前にパネルの掘り忘れを再チェックします。

主翼下面はこんな感じです。インスペクションハッチを掘り忘れていますね・・、こういう手戻りが効率をぐっと下げます(汗)。

左翼下面のランディングライトを忘れていました、前もって作ったほうが楽ですが、今更なので後でつくります。

水平尾翼はこんな感じです。主翼同様に接合線を消して実機に近づけます。

【エンジン周りの製作】

なかなか気が進まず、随分、間が空いてしまいましたがぼちぼち進めてまいります。

【出典】文林堂 世界の傑作機

予定通り、エンジン周りから続けていきます。エンジンはお馴染みのプラット&ホイットニーR-2800です。「世界の傑作機」によると、ヘルキャットのはR-2800-10となっています。ウィキで調べたら、コルセアはR-2800-8。枝番が異なっていますが、当キットはカウリングが開かないので前面からしか見えません。というか、技術的に開けれません。よって細かいところは無視してタミヤコルセアのエンジンを転用します。

タミヤコルセアのエンジンです。プラグコードはサカツウのソフトワイヤー0.3mmです。歳のせいか、この位の径の穴開けが、だいぶしんどくなってきました。今回は奇跡的に的を外さずに開けることができました。シリンダーの方もプラグ部に穴を開けます。

【出典】文林堂 世界の傑作機

直径的に、プロペラも同じようですので、こちらも転用します。主観ですが形状も同じに見えます。但し、F4U-1Dのプロペラでないと形状が違います。

左がヘルキャットのプロペラで、右がコルセアのものです。何十年前のキットと、最近のキットですよ。ディティールはさておき、直径が寸分違わず同じって、やっぱ日本のメーカーさん流石です。

【出典】大日本絵画 エアロディティール17 グラマンF6Fヘルキャット

続いてディティール工作に入っていきましょう。エアロディティールより写真のご紹介です。クランクケースの部分がコルセアのエンジンと異なりますね。もう一枚、

【出典】大日本絵画 エアロディティール17 グラマンF6Fヘルキャット

正面から見たらほぼ同じなので良しとしましょう。

インストを参考に塗装しますが、ほぼ先入観で塗っています。シリンダーはシルバーで塗ってから黒で墨入れです。「エアロディティール」の写真をみると、もっといろいろ作るべきがあるのですが、これぐらいにしてモチベーションを保ちます。

裏面はこんな感じですが、胴体との接合で改造していくことになると思われますので真面目に作っていません。

胴体側です。ざっと仮組したところ、ここはそのままでも使えそうなので、とりあえず平らにしておきます。

【出典】大日本絵画 エアロディティール17 グラマンF6Fヘルキャット

ヘルキャットの特徴ですが、プロペラの軸が少し下側に傾いています。正確な数値は出せませんが、目検でそれらしくしましょう。

位置調整の結果、給気管の部品は写真のような形になりました。給気管自体はあっても干渉しませんが、調整中に折れてしまったので、撤去しました。完成後は見えませんし。

プラ板を貼って、ざっと水平垂直を出します。そのプラ板の上半分に0.2mmプラペーパーを貼って、エンジン本体を接着します。ほんの少しだけプロペラ軸が下側を向きます。強度が欲しい部分なので、流し込み接着剤で完全溶着させます。

プロペラ軸がきちんとセンターに来るように位置調整をしっかりします。

真横からの写真ではないので判りづらいですが、ほんの少し軸が下を向いています。

上面のカウルフラップは開けようと思いますので、見えそうな集合排気管をでっちあげます。こちらもタミヤコルセアの排気管が転用できそうです。外側の端末部のみスクラッチしましょう。

排気管の端部は真鍮パイプで製作します。集合管はカウルフラップ開でもあまり見えなさそうなので少しほっとしました。カウルフラップは使えそうにありませんね・・・。実機写真を見ると、割と形状が複雑なので閉状態にしようか・・・。迷います・・・(-_-;)
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